梨ごよみ
梨づくりの1年。真冬の剪定に始まり、花満開の4月、梅雨をへて大きな果実をつける夏から秋、初冬の紅葉へ
剪定作業(12月~2月)
剪定は梨の出来を左右する最も重要な作業。
①不要になった枝を切り落とす。
②主枝の先端を立てる。
③着果枝(実をつける枝)を棚面につける。予備枝(来年以降使う枝)を育成する。
以上の手順で樹形を整え、養分を隅々にまで行きわたるようにします。
剪定は生産者の技量が最も現れる作業。
花芽整理・施肥(2月~3月)
花芽整理とは、たくさんついた花芽を選りすぐる作業。
品種により作業に差はありますが、基本は充実した花芽を1~2つ残し、多くの養分をそこに集中させるようにします。
施肥(基肥)
肥料は多ければ良いというものではありません。
従来、冬季に大量の施肥を行っていました。このことによる生育障害が見受けられるようになり、 最近では基肥の考えが変わっいます。
施肥時期は3月、施肥量は従来の6割程度にするのが良いとされています。
摘蕾・交配(4月)
摘蕾は、花芽が開化するまでに行う作業。養分転換期を迎える5月初旬まで 梨は前年蓄えた養分で生育します。開花時は養分を大量に消費するため、摘蕾で開花数そのものを抑制し養分を残した花に集中させます。
交配は、充実した花に受粉させる作業。梨は自家受粉しませんので、梵天を使って人工授粉します。花は下部から順番に咲いていきますので、最適な「番花」の開花を狙って交配します。
最近は、授粉用花粉を輸入(中国産)に頼る生産者も増えていますが、ぴかいち梨園では輸入花粉に頼らず、自家製花粉のみで交配します。
摘果・施肥(5月)
摘果は、着果させた梨の玉を選りすぐる作業。
大きさ、形、傷、着果位置、軸の太さ長さなどを見て、適切な玉だけを残します。
更に、品種ごとの特性(軸折れしやすい、変形果になりやすい、味が乗らないなど)も考慮して作業します。
施肥(玉肥)
5月、養分転換期を迎えるタイミングで施肥を行います。
重要なのはタイミングと施肥量。品種により最適な施肥時期に違いがあります。
適時、適量の施肥をおこないます。これを間違うとたいへん。玉の肥大が悪い、熟期がきても赤らまない、味がのらないなど大きな影響が出ます。
新梢管理・誘引(5~7月)
新梢管理は、樹勢をコントロールする作業。
元来、梨は巨木になる樹木。これを棚面につけて栽培するので、樹形維持は必須。新梢管理を行うことで梨の樹勢を落ち着かせ、隅々にまで養分を送るようにして、充実した実をつけるようにします。
この作業を丁寧におこなっている果樹園は樹形が整っており、一目で良し悪しがわかります。
誘引も新梢管理の一環です。
来年の果樹園の状態を決める大事な作業です。
主幹(梨の幹)近くからは太い枝が、主枝先端付近からは細い枝が出ます。太い枝は誘引して樹勢を抑え、細い枝は強くなるように引き上げ調節します。このような樹勢コントロールを行い、翌年度の結果枝を育成していきます。
新梢管理や誘引は目立ちませんが、重要作業です。
仕上げ管理(6~7月)
仕上げ摘果は、収穫前の最終作業。この作業で収穫時の果実の大きさをコントロールします。
梨は工業製品とは違い、丁寧な作業を行っていても、同じ出来になるとは限りません。気象条件、樹勢、病気等により生育にバラツキが出ます。
仕上げ管理でそれらを補正し、甘くて、大玉で、姿かたちのいい果実が実るように調整します。
収穫(8~10月)
収穫期に入った梨は一つずつ確認し、適熟(=甘熟)になったものから順次収穫します。
日本梨は基本的に追熟しませんので、鮮度が重要です。
その日に収穫した梨を、撰果・箱詰め、発送までおこないます。
施肥・秋枝落とし(9~10月)
施肥(礼肥)とは、頑張って大きな実をつけてくれた果樹へのお礼です。
大きな実をつけるために丁寧な成育管理をしますが、最後は梨の木の頑張り。頑張ってくれたことに感謝し、礼肥をして木の疲れを癒します。
秋枝落としは、選定作業の始まり。
剪定は品種により違いがありますが、基本は更新剪定 (着果枝を新しい枝に更新する剪定)。
同じ結果枝ばかりを使い続けると枝が老化し生産力が落ちます。秋枝落しは、特に古くなった結果枝を落し、新しい枝に更新するための準備作業。目安は結果枝全体の2割を落します。
新木の植え付け(12月)
梨の寿命は、おおよそ50~60年。樹齢が20~30年を超えてくると樹勢が衰え生産量が落ちるので、木を更新する改植が必要になります。果樹園面積全体の5%を毎年改植するのが理想的とされています。